この本は、40年前の登山ガイドブックである
著者自身が博物学の研究者であることも確かだが、このガイドブックには目次にもあるように、山岳地帯の自然や麓の人たちの生活、風俗や歴史、写真のとり方まで総合的に取り上げらている。40年を経て、あらためて本を開くと、その一字一句が懐かしく思い出される。付録の地図とともに少なくとも10年間は私と山行をともにし、次の計画のため繰り返し読んだ懐かしい本である。
この本は、現在の私の登山や山岳写真に対する姿勢の根幹となっている本である。登山とは 「山で生活すること」 と、私は考えている。 山に向かい、山で生活するために何が必要か。山行を楽しいものとするために、何が必要か。どのようなことに気を配らなければならないか。そのようなことがさりげなく盛り込まれているガイドブックである。その意味で現在の類書とは趣を異にする。
「山を楽しむのだ、山で楽しむのではない」という、私の自然への対し方も、青年時代の登山に育まれているのかもしれない。
なお、この本はガイドブックという性格上、残存数が極端に少ない。大切にしたい本である。
2013.11.19.記
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