ワクチン接種作戦・顛末

ワクチンの接種状況について、「そのうちに」へ記載したものを集約しました

 

ワクチン接種の丸投げ

①国はワクチンの接種業務を自治体に丸投げした。確かに「地方ごとの事情の分かっている」自治体に任せることは、理にかなっている。

②私の住んでいる練馬区を例に取ると、300ある診療所・クリニックから130の個別接種の拠点を設定。区を4つの区域に分割し、集団接種も行うことにした。また、75歳以上・65歳以上・基礎疾患のある人・・・と順次日程を定め、順次接種券を印刷・配布の計画でいた。区民を精密に調査して、町ごとに割り振った計画であった。「練馬方式」として話題にもなった。

③しかし、国はワクチンの配布計画を一向に発表しない。最初に1箱だけを各自治体に「平等」に配布した。予約の争奪戦がマスコミをにぎわせた。確かに、この時点では輸入のめどが立っていなくて、EU待ちの状況であって仕方ない状態であった。しかし、いつまでたっても在庫と配布の予定を秘密扱いにしている。今では、地方自治に権力を振うために利用しているとしか思えない。

④一方で、タブレットによる接種情報の収集に躍起となっている。1日100万人の実績を発表したいとしか思えない。報告の遅い自治体には、「ワクチンの配布を、1回とばす」などと脅すありさまである。このタブレットの機能の「いい加減さ」は、のちほど。

自衛隊による大規模接種

①ここで災難に遭ったのが、自衛隊である。命令に忠実であることをいいことに、菅さんの一声、であった。大阪で日に5000人。東京で1万人を目標とした。国の力(権力)でとにかくはじまった。4週間✖3の計画で、第1週で東京23区在住、第2週で東京都下在住、第3・4週で一都三県の65歳以上を対象とした。

②始めて見ると、第1週はすぐに予約が一杯になった。大手町でもあるし、気の早い(短い)高齢者が殺到した。第2週は多摩地区にまで適用範囲を広げたら、一向に応募がない。近隣の県に範囲をひろげて、やっとふさがった。第3・4週は、年齢制限・居住地制限を取り払って、大混雑。おまけに、「接種券が必要」なので、自治体は接種券を求める人であふれた。自治体の配送計画は、一瞬で壊れ、自治体が悪者になった。

③問題点は、多摩地区の高齢者は大手町まで2時間くらいかかる。接種時間を含めて、往復5時間。夏の猛暑の中、2回通わなければならない。人気のなかった理由のひとつに、すでに自治体の接種が始まっていて、近所のかかりつけで予約が済んでいたこともある。
併行して生じたトラブルは、自治体との重複予約である。世田谷区が最初に気づいて、「手作業」でチェックしたら、少なくない数が重複していた。あわてて、キャンセルをするよう呼び掛けたが、個別接種の現場は、無断??欠席が生じて、大混乱。

④第5~8週は第1~4週の人の2回目接種でほぼ満員。欠席もあるので、1日300人の新規接種に留めた。新規に関しては、ほぼ開店休業。

⑤さて、第9~12週はどうするのだろう。第5~8週に1回目を打った人のために、1日300人でも、休むわけにはいかない。でも、新規を受け付けると、2回目の保証ができない。
7/21 発表で、1か月延長。これは決断を1か月伸ばしただけ。
大阪会場を確保するために、政府は2億円を使ったとか。

⑥反省:大規模接種をするなら、対象から高齢者をはずすこと。自治体の接種活動とかぶさらないこと。接種券にこだわらない方法を考えること。

職域接種

①政府は1日100万人の目標を達成するために、民間の力を借りることとなった。発想としては政府にしては上出来と思うが、発想が単純で配慮が足りないので、波乱が起こった。

②まず、「職域」であるので「接種券」を後回しにして接種の迅速化を図ったのはよいが、自治体との重複は避けられない。大規模接種での反省が見られない。練馬区では130もの診療所・クリニックで予約取り消し・キャンセルが相次いだ。1日6人から12人の接種予定でひとり二人がキャンセルとなると、ワクチンを無駄にしないための努力は大きなものになる。

③それよりも重大な問題点は、ワクチンの確保である。自治体は市民全体の接種予想分を国に求める。これが、国が予定している(保有している)ワクチン量と思われる。しかし、ここで職域接種を募集すれば、対象となる人たちは自治体がワクチンを準備している人たちと同一である。その人数分が日本全体でみれば、「不足量」となる。おまけに、ワクチンがすべて日本に届いているわけではない。
民間の力を借りるのはよいが、政府がそれについていけない、情けない国なのだ。

計画性の欠如

①私が腹立たしいのは、昨年の「定額給付」で同じ失敗をしているのに、学習されていないこと。
定額給付は自治体に丸投げして、軌道に乗り始めた時、「マイナンバー」の活用?を言い出して、日本中が大混乱に陥った。その構造は、家族単位への給付計画(自治体)に、個人単位の申請(マイナンバー)が割り込んだ形。今回は、地方単位の接種計画に、広域接種が割り込んだ感じ。自治体の工夫を台無しにする国の行為で、政治がらみであることも同じ。
せめて対象を高齢者以外にすればよかったのだが。その点、消防官・警察官に対象を絞った接種を打ち出した小池さんは、わかっていらっしゃる、と思ったら、築地は4週後の2回目接種に使えない。あわてて、代々木へ避難。トホホホホ。

②根本的な問題は、政府がワクチンの在庫や配布計画を公表しないことである。地方自治体や職域接種に応募する団体は配布計画を示されないまま実施計画を立てなければならない。場所と医療関係者の手配と契約。それも4週間の間隔を空けて計画しなければならない。そのあげく、募集停止、さらに「計画通り配布できません」となると、金銭的な損害も発生する。

③さらに、ワクチンの配布に「政治的な思惑」が感じられる。タブレットの不備が原因で作業が遅れている自治体に、「一回とばすぞ」と脅しをかけたり。文科省の圧力か、大学の接種がいやに順調であったり、大企業に有利であったり。一番苦労している中小の飲食業が取り残されたり。公平性のなさが徐々に表面に現れてきた。

④まあ、すべての根源は「1日100万回」の大号令でしょう。オリンピックをやりたいばっかりの頼みの綱。そういえば、以前、「・・・だったら総理も国会議員も辞めます」から始まった混乱に似ている。

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