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「有限の生態学」
栗原 康 著 目 次 1994年に岩波書店から 1975.12.28. 24才
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「ある日、瓶の中の水をなにげなく顕微鏡でのぞいてみた。この水は三ヶ月ほど前に竹の煮汁を入れて、そのまま野外に放置しておいたものである。」 著者は、このフラスコの中に細々とではあるが非常に安定した世界が繰り広げられていることに驚く。外界から新しい生物が混入 しても、物理的な条件で、ある種が爆発的に増殖しても、時間の経過とともに安定状態に復帰する。その仕組みを研究し、「個々の生物が活力を落としたために安定と共存は保たれている」 と第一章を結ぶ。
最終章のまとめで、「有限の空間ととぼしい資源のなかで安定と共存をはかろうとすれば、個々の生物は、数と活力の低下という代償を支払わなければならないのかもしれない。」 「もし人類が有限の地球の中で安定と共存を求めつづけるならば、このような文化の創造こそ人類の課題といえるのではないか。」 と結んでいる。この本に書かれているモデルの構造を、たとえば経済学になぞらえば先般のリーマンショックなどは必然の経過であり、人類はそこから何を学んだのだろうかと思う。 ホーキンスが来日した時、「なぜ宇宙人が地球に現れないのか」と問われて、「宇宙へと向えるほどの文化は(宇宙時間的には)瞬時に消滅するから」と答えたことが思い出される。 2013.3.9.記 |