憲法改正(自民党案)

あまり取り上げられることがありませんが
自民党は「憲法改正案」(H24.4.27.)を発表しています
いずれ国会で「たたき台」となる改正案です
9条など注目を集めていますが、他の条項も重要な変更があります

思いついた条項を「そのうちに」に書き連ねてきましたが
ここに転載・編集します 一部修正があります

内容は  ①現行憲法  ②自民党案  ③私の意見  の順です
(日付は「そのうちに」の初出日です)

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前文(2022.8.29.)

現行憲法

日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

自民党草案(全面書き換えです)

日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。
我が国は、先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し、今や国際社会において重要な地位を占めており、平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する。
日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。
我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる。
日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する。

私見(永原)

(A) 憲法の前文は、国家の将来像を描き、その理想に向かって必要な方向性を宣言するものである。したがって、その後に続く憲法の条文と呼応していなければならない。
現憲法は、戦後の混乱の中から独立国家を目指す指針を明確に示していると思う。確かに、戦後の混乱期の影響が色濃く、現代にはそぐわない点もある。しかし、目指すべき将来像や理想は現代でも全く色褪せることはない。
自民党草案は、それに比べて「小学生レベル」である。その理由を指摘してみたい。(採点するとすれば、10点でも20点でもなく、「差し戻し」「顔を洗って・・・」くらいの評価)

(B) まず、意味のない言葉が多すぎる。列挙すると、
「長い歴史と固有の文化を持ち」:(世界中のどの国家も「長い歴史と固有の文化」を持つ)
「天皇を戴く国家」:(「戴く」の意味が不明)
「先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し」:(大戦の反省もなく、また、災害を乗り越えたのは「国民」である)
「国と郷土を誇りと気概を持って」:(「誇り」を持つのは良いが、何を守ろうとしているのか)
「和を尊び」:(聖徳太子を担ぎ出すのか)
「家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」:(国家とはそういうもの)
「美しい国土」:(草案を執筆者した人の「美意識」?)
「活力ある経済活動を通じて国を成長させる」:(国の成長とはなにか、経済活動ではない)
「良き伝統と我々の国家」:(我こそはその継承者?思い上がり)
「末永く子孫に継承するため」:(憲法を制定する理由?)

(C) 話題の「統一教会」との、「共通の単語」が多い。
「歴史」「文化」「統合」「平和」「友好」「」「家族」「教育」「成長」
偶然とは思うが、耳に心地よい言葉が並ぶ。

(D) 全体の基調として、「古き良き時代」「昔の事・物はみんな良かった」という「懐古趣味」が貫かれている。
Q「戻れるとしたら、どの時代ですか」と聞いてみたい。それぞれ大変な歴史を経てきていると思うのだが。

(E) 文章の末尾が、「統治される。」「貢献する。」「形成する。」「成長させる。」、現代進行形の表現で未来志向ではない。そうしなければ国家は崩壊する。
最初の「統治される。」に至っては主語が明確でない。こんな憲法を作られては、国民として不安でならない。

ここまで「添削」してきて、無力感が増してきている。ここまで。「全文差し戻し」が妥当。

7条(解散権)(2021.10.14.)

①岸田内閣が解散した。解散権は総理の特権事項で、「殿下の宝刀」と言われているが、根拠は憲法七条。皆さんご存じとは思いますが、念のため。

②憲法七条は、
第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
この後、第十まで続きます。

③天皇の国事行為は「内閣の助言と承認」のみに限定されています。「内閣の助言と承認」なしには、何もできないし、やってはいけないことと、憲法で定められています。しかし、内閣は総理大臣が指揮していますから、総理大臣の決断で「解散」を閣議決定できるわけです。

④一方、憲法の条文を注意深く読み解けば、その意味は、大切な「国事」は天皇の言葉で国民に公布することであり、内閣、つまり行政が国政に必要と認める事項であり、何よりも「国民のために」行う「国事」であるはずである。決して総理大臣の「専権事項」ではないはずです。

⑤いつのころからか、この条文が都合よく解釈され、現在に至っています。念のため、ここに記載しておきます・

9条(戦争の放棄)(2022.8.20)

現行憲法

第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

② 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

自民党草案

(平和主義)

第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては用いない。
2 前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。

(国防軍)

第9条の2 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。

2 国防軍は前項の規定による任務を遂行する際は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。

3 国防軍は、第1項に規定する任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。

4 前2項に定めるもののほか、国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める。

5 国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する罪を起こした場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保証されなければならない。

(領土の保全)

第9条の3 国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない。

私見(永原)

(A) 第9条の2、3、4、5にある「法律の定めるところにより」という文言は、憲法の主文としては何らの規定にならない。為政者は自由に「法律」を作ることができる。
つまり、憲法には何も定めていないことに等しい。逆に、法律を定めれば「何をしてもよい」と「お墨付き」を与えている。
たとえば、第9条2の第2項では、「国会の承認を必要としない事項」を法律で定めれば、何をしてもよいことになるのだから。
また、第3項の、「公の秩序を維持」や「国民の生命若しくは自由を守る」という文言は、かつて戦争を始めた為政者の常套文句である。

(B) 第9条の3などは、「蛇足」としか言いようがない。憲法に書くべき内容ではない。
この項は、為政者が戦争を始めるときの「理由付け」に使われることが関の山。

(C) 憲法は、為政者が暴走することを防止することが最大の目的である。そのことを、どのように表現するかが課題で、「法律で定める」は最悪な表現。玄関を開放して、「土足でどうぞ」と言っているに等しい。

10条(国民の権利及び義務) (2023.5.4.)

①現行憲法

第三章 国民の権利及び義務

第10条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。

第11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保証する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及将来の国民に与へられる。

第12条 この憲法が国民に保証する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利ついては、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

自民党草案

第三章 国民の権利及び義務

(日本国民)

第10条 日本国民の要件は、法律でこれを定める。

(基本的人権の享有)

第11条 国民は、全ての基本的人権を享有する。この憲法が国民に保証する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利である。

第12条 この憲法が国民に保証する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。

(人としての尊重等)

第13条 全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利ついては、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。

私見(永原)

(A) 「公共の福祉」が「公益及び公の秩序」に書き換えられていることが気になってならない。現憲法が国民の立場で述べられていることに対して、改定素案は「国民の立場を守る」という隠れ蓑を使った「国家権力の介入」が透けて見えてしかたない。
(B) 「責任及び義務が伴う」、「公益及び公の秩序に反しない限り」など基本的人権の解釈により「義務や制約」が伴うことを示唆している。現行憲法ではそのような表現が意識的に避けられているように思えてならない。
(C) 「公共の福祉」を求めるという「前向き」の姿勢に対して、「秩序に反しない限り」と条件を付けることにより「国民をコントロール」しようという「後ろ向き」の姿勢が感じられる。これは改定素案全体に見られる兆候である。
(D) 「すべて」と「全て」は同じか。「総て」「凡て」「総て」・・・。私もときどき迷うこともある。この条文に限らず「昭和」の表現を修正している気配がある。必要性があれば当然だが、意識的な姿勢もうかがえる。私なぞ、全体主義を連想して、「みんな」というニュアンスから離れるような気がする。
(E) 言葉尻をとらえているように思いますが・・・。「日本国民たる要件」と「日本国民の要件」は同じだろうか。「たる」は自覚を伴うようなニュアンスがあり、単に「の」であると法的条件に思われる。法文だからそれで良いのだが、憲法の条文は格調が必要。「国会議員たるもの」「政治家たるもの」「教育者たるもの」という使い方が死語に近くなっている現在、今更言ってもダメかと。

14条(法の下の平等)(2023.5.4.)

①現行憲法

第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
②華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
③栄誉、勲章その他の栄典授与は、いかなる特権も伴わない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

自民党草案

(法の下の平等)
第14条 全て国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、障害の有無、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

私見(永原)

そもそも、「同性婚」に関わって最高裁で争われている条項。
(A) まず、「門地」による差別は皇室の扱いについて課題を残しているようである。最初「部落差別」を考えたのだが…
(B) 現行第3項の「いかなる特権」が何を意味していて、現在はどうなのか。不明なので、言及はさける。
(C) 新設の「障害の有無」だが、別の条文に入れるべき問題と感じる。大きな違和感を感じる。運動神経の弱い私や、勉強の嫌いな人、IT化についていけないひとなどある意味で生きにくい時代?。障碍のある人がどういう解決を求めているかが問題。
(D) 憲法は日本国民を対象とするものだが、むしろ、「国籍の違い」も法の下での平等を保障すべきだはないか。グローバル化のなかで「国際憲章」級の問題提起をしても良いのではないか。昨今の難民問題を考えるにつけて、日本の姿勢が問われている。

20条(信教の自由)2022.8.19.)

現行憲法

第20条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

② 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。

③ 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

自民党草案

(信教の自由)

第20条 信教の自由は、保証する。国は、いかなる宗教団体に対しても、特権を与えてはならない。

2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。

3 国及び地方自治体その他の公共団体は、特定の宗教のための教育その他の宗教的活動をしてはならない。ただし、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りでない。

私見(永原)

(A) 冒頭の「国は」と「宗教団体も」とあるように、主語が変化している。この違いがよく分からない。
追記:現行の「何人に対しても」は、宗教の自由を侵す団体が国でも宗教団体でも成り立つ。一方、自民党草案ではその点を「ぼやかし」第3項で例外規定を設けている。
追記:自民党草案では「宗教団体は政治上の権力を行使してはならない」が削除されている。その影響には、深~~い意味が???。(8/24)

(B) 第3項では、自民党案の、「 社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りでない。」とあるが、その判定は国・為政者が行うことになる。
時の権力者の判断を「例外規定」で保障することは、憲法の理念に反する。憲法とは時代にや人によって左右されない恒久的な「理念」を宣言するものである。
例えば、「国旗掲揚」とか「靖国参拝」に対する考え方を為政者に保障することになる。また、第2項の「参加を強制されない」と自己矛盾をしている。

(C) この(信教の自由)にとどまらず、現在問題となっている事案を「自民党の都合の良いように」解釈することが出来るようになる。

(D) 第3項の「その他の公共団体」の範囲が不明。公共団体の意味する範囲は広く解釈される。

 24条(婚姻) (2023.5.6.)

①現行憲法

第24条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
(2) 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

自民党草案

(家族、婚姻等に関する基本原則)

第24条 家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わねばならない。
2 婚姻は、両性の合意に基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
3 家族、扶養、後見、婚姻及び離婚、財産権、相続並びに親族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

私見(永原)

(A) そもそも「基本原則」とは誰の基本原則なのか。「社会の自然かつ基礎的な単位」とともに自民党が持っている「家族観」が垣間見える。憲法に用いる用語としては不適切。裁判になれば、「基本原則」の解釈から審理が始まる。「尊重される」・「助け合わねばならない」も同様。草案の第1項は不要と思われる。
(B) 「両性の合意のみ」の「のみ」が草案では削られている。必要なくなったと言えばそうなのだが、果たしてそうか。
(C) 自民党草案の第3項。付け加えられているのが、扶養・後見・親族、削られているのは、配偶者の選択・住居の選定。順序や併記の表現も微妙に異なる。時代の変化で重要性が変化したと言えばそうだが、説明が必要であろう。
(D) 自民党が「党是」とする「家父長制」への回帰が感じられて仕方がないのは、私だけであろうか。

新設条項(25条・環境保全) (2023.5.7.)

②現行憲法

なし

自民党草案

(環境保全の責務)

第25条の2 国は、国民と協力して、国民が良好な環境を享受することができるようにその保全に努めなければならない。

(在外国民の保護)

第25条の3 国は、国外において緊急事態が生じたときは、在外国民の保護に努めなければならない。

(犯罪被害者への配慮)

第25条の4 国は、犯罪被害者及びその家族の人権及び処遇に配慮しなければならない。

私見(永原)

(A) どの項目をとっても、政府の判断で実行できる内容であり、憲法に記載しなければならない理由はない。憲法は権力者の「行き過ぎ」から国民を守るためにあるので、自民党草案に盛り込まれていることに「不信感」を抱かざるを得ない。その観点から、以下、注意点を述べる。
(B) 第25条の3は、自衛隊の海外派遣を念頭に置いているように感じる。最近のスーダンのような内乱状態の国への派遣は、自衛隊の現在の「肩書」では無理がある。9条の改訂とセットと考えられる。25条の3項として紛れ込ませているのは「姑息」と思う。
私は、赤十字のような国際団体「国際救助隊」を作り、国籍を問わず避難民の救助に当たるべきだと考えている。
(C) 第25条の2は、「良好な環境を享受」を理由にどのような施策を打ち出すかにかかっている。たとえば、二酸化炭素による地球温暖化に対応するという理由で、原子力発電の促進、用地取得のための強制収容などが打ち出される可能性がある。
私は、地球単位でのエネルギーの「総量規制」しかないと思うが、人類にそれができるかと問われれば「はなはだ、心もとない」と答えるしかない。
(D)

(E) 以上のように、誰もが納得するような一行を憲法に盛り込むことにより、思いもかけない強制力が権力者側に与えられることになる。憲法に基づくのではなく、国会の十分な協議を経て実施する必要がある。
以下、検討中

96条(憲法改正) (2022.8.24.)

現行憲法

第96条 この憲法の改正は、各議員の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

② 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、直ちに国民の名で、この憲法と一体をなすものとして、直ちにこれを交付する。

自民党草案

第100条 この憲法の改正は、衆議院又は参議院の議員の発議により、両議院のそれぞれの総議員の過半数の賛成で国会が議決し、国民に提案してその承認を得なければならない。この承認には、法律の定めるところにより行われる国民の投票において有効投票の過半数の賛成を必要とする。

2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、直ちに憲法改正を交付する。

私見(永原)

(A) この項のポイントは、国会決議の要件を「三分の二」から「過半数」に変更することである。以前、安倍さんが「たった三分の一の反対で憲法を改正できない」と発言したことが気になる。この言い方に倣えば、「過半数を取れば、憲法を発議できる」ことになる。選挙制度の変更で、与党にとっては「過半数」は容易である。というより、過半数の連立政権を作れば与党となり、憲法改正ができることになる。これは危険であり、国政の混乱を招く。
なお、「法律の定めるところにより」のフレーズがあるが、現行憲法にも「国民投票」の規定がない。その中に、「海外在住」や「オンライン」などの投票権を早急にけっていし、「国民の同意」を得るべきである。

(B) 私見だが、「国民投票の過半数」は妥当だろうか、昨今の欧米の国民投票の状況を見ていると、国民の意見が真っ二つに割れているとき、国民投票が僅少差でどちらかに決まることは危険ではないか。むしろ、国民投票こそ「三分の二」とするべきではないかと思う。

(C) 第2項で「国民の名で」が、削除されている。天皇は内閣の助言で国事行為を行うが、憲法は国政を縛る法律であるから、政権与党の思惑で行うものではない。天皇は日本国民の象徴であるから、「国民の名で」は必要と思う。

新設条項(98条・緊急事態条項)(2022.8.24)

現行憲法

なし

自民党草案

(緊急事態の宣言)

第98条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。

2 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。

3 内閣総理大臣は、前項の場合において、不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。

4 第2項及び前項後段の国会の承認については、第60条第2項の規定を準用する。この場合において、同項中「30日以内」とあるのは、「五日以内」と読み替えるものとする。

(緊急事態の宣言の効果)

第99条 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効果を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。

2 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認を得なければならない。

3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第14条、第18条、第19条、第21条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。

4 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。

私見(永原)

(A) 添削してみました。(個人的には、この非常事態条項は必要ないと思っています。)

第98条 内閣総理大臣は、閣議にかけることにより緊急事態の宣言を発することができる。宣言するための要件は、あらかじめ法律で定める。
(武力攻撃、内乱等・社会秩序の混乱、地震等・大規模な自然災害その他のような表現は憲法には「似つかわしくない」)
(宣言のための要件は時代によって変化する。国会の審議が必要。)

2 緊急事態の宣言は、宣言後**日以内に国会の承認を得なければならない。
100日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、100日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。
(宣言の承認及び有効期限の表記)

3 内閣総理大臣は、宣言の承認・継続について国会の承認を得られないとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。

4 第2項及び前項後段の国会の承認については、第60条第2項の規定を準用する。この場合において、同項中「30日以内」とあるのは、「5日以内」と読み替えるものとする。
(予算案の議決に関する衆議院の優越)

(B) 相変わらず「法の定めるところにより」のオンパレードである。

(C) 99条の「その他の処分」の意味が不明確

(D) 99条第2項の「国会の承認」は、国会の外に「検証委員会」を設置するべきである。これは「非常事態宣言」の検証も併せて行うべき。

(E) 99条第3項の「国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置」は政治家の常套文句。「その他公の機関」の範囲は?。
基本的人権を「最大限尊重」とあるが、具体性が無ければ守られないことは、歴史から明らか。

5 緊急事態条項は必要とも思えるが、性善説に基づいてはいけない。どのような政治家が現れても耐えうる憲法でなければならない。「閣議」決定が緊急事態宣言の要だが、野党や法律家も含めた組織とし、緊急事態後の「検証」に耐えうる組織でなければならない。
この草案を読むと、現自民党の「お手盛り条項」としか思えない。文章も「憲法」にふさわしくない。