10をつくる

あ そ び

 こどものころに、電車の切符に印刷してある数字で 10 をつくる 遊びがあった。
たとえば1234 ならば 1+2+3+4=10、
2345 ならば   (2×5)÷(4-3)=10など、使ってよいのは 四則算法と括弧。

実は、1 から 9 までの 異なる4個の数字 ( =126通り )すべてで10 をつくることができる。このことを最初に教えてくれた人物は、むちゃくちゃ忙しいはずの中堅証券マンで、たしか60時間くらいかかったという、とくに、最後の1組には10時間くらいかかった、という話だった。

この話をすると、必ずといっていいほど、「その最後の1組って、なに?」という質問が返ってくる。ごく自然な反応である。

この話題に関して、指摘したい点がいくつかある。
① 小学生くらいだと、まず 「いつでもできるの?」という疑問が出てくる。
異なる4個の数字 という条件を付けるかどうか、発展して 同じ数字があるとき はその後の話。
② まず、全部の組み合わせを リストアップ すること。これは意外と面倒。
③ 実際にやってみて、全部できればよいが 最後まで行き着かなかったときどうするか。できないことの証明は一般的に非常に難しい。「全部できる」という保証があるから、努力を続けることができる。
④ おもしろいのは、最後に残る組み合わせは必ずといっていいほど皆同じになる。答えを見ると、「う~~ん」とうなってしまう。問題が簡単なだけに、その答えには、深く考えさせられるものがある。
⑤ 答えを尋ねないまでも、この組み合わせを聞きたがる気持ちはわかるが、それでよいか。

科学というのは、「なぜだろう」という素朴な疑問から始まる。しかし、答えが出るかどうかも分からないようなテーマを、徒労に終わるかもしれない恐怖をかかえながら、最大級の努力を続け、解決に至る。科学者にとって欠くことのできない態度であろう。答えがあることを知らないで、最初に最後の1組を解いた人はすごい。
 「その最後の1組み、絶対に教えないで」という子供がいたら、もしかしたら、将来大きな仕事のできる子かもしれない。大切に育てたい。

むかし、ケネディ大統領が「60年代の終わりまでに人類を月に送る」と宣言し、69年の終わりごろ達成した。答えがあることを確信できたのだろう。あとは努力のみ、時間の問題だった。
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2013.6.23.  記
2018.7.27.  修正