世界がもし100人の村だったら

 

book-02            「世界がもし100人の村だったら」

池田香代子 再話
C ダグラス・スミス 対訳
マガジンハウス

  本書を2001年2月に亡くなられた ドネラ・メドウズさんに捧げるその共著「成長の限界」と「限界を超えて」は、環境問題に警鐘を鳴らす古典的名著である。世界が限界を乗り越えるための働き手の誕生を夢見ていた彼女は、1985年新聞コラムを書き始めた。のちにその抜粋が「ザ・グローバル・シチズン」にまとめられたが、そこに収められなかった1篇のエッセイが、インターネットの海に投げこまれた。
この現代の「ガラス瓶の中の手紙」が、Eメールというボーダーレスな通信手段で世界各地をサーフィンしながら、ひとつのメッセージへと結実していく。メールを友人に送ることにより、自分の気持ちを書き足すことにより、そこに関与した無数の人びとこそは、新しい「世界市民」をみずからのうちに予感した、彼女の子どもたちだったのだ。その生みの母がだれかも知らないままに……

2002.1.  51才

  ともすると説明的になりがちな本書の内容をクレヨン画で表現し、子どもたちの視覚に訴えた本書の挿絵はドネラ・メドウズの意図を見事に具現した絵本である。まず、このことを述べておきたい。
  ドネラ・メドウズは、1972年ローマクラブの依頼で「成長の限界」を執筆したマサューセッツ工科大学のチームの一員です。当時コンピュータで「世界の終わりを予言した」などと扱われ、社会からは必ずしも正確に受け取られなかった研究報告です。ドネラ・メドウズの素晴らしいことは、新聞のコラムを通じて一般人に、インターネットを通じて子どもたちに、研究者の立場でわかりやすく伝える努力をしている点です。
  インターネットに投げこまれた彼女の文章は、人から人へ、さまざまな言語で、内容も次々と変化しながら、しかし収束していきました。民話(フォークロア)が何百年もかかって長い世代を経て完成してゆく過程が、インターネットの世界で20年くらいの間に起こったのです。インターネット・フォークロアを略してネットロアという言葉もあるようです。当初は、著者も原本も分からなくなっていました。
2013.3.10.記

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