「乳児死亡率」という数値がある。誕生から1年以内の死亡率である。乳児死亡率 0 の達成は予想外に難しい。人口の多い都市部でも、山奥の過疎の村でもそれぞれの困難さがある。岩手県の秋田県と接する山間地域の村で、初めて達成され、その後も何度も達成しているという。また、老人医療の無料化に踏み切り、劇的な医療費の減少と老人の健康な生活を導いたという。そのような村政が現実にある。むかし、国が老人医療を無料化しようとしたとき、村長と病院長は国会に招かれ、参考人として証言した。
住民の命と健康を守るのだという、確固たる信念と、柔軟な発想のもとに信じられないような村政が行われた。国や県からの圧力に対して、深沢村長は、「私は憲法を守っているのだ」と答えている。
(第二五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。)
岩手のことを調べていると、その発想の豊かさに驚かされる。江戸時代に、犠牲者を伴わない百姓一揆を、唯一成功させたという田野畑村、無形文化財第一号に指定された早池峰神楽の岳・大償の部落、宮沢賢治や石川啄木を育て、遠野物語の故郷でもある。そのような伝統・風土の土地である。度重なる津波を乗り越えてきた土地であるが、このたびの復興計画を見ていると心配でならない。もっと、土地の人びとのこころにより沿った支援が必要なのではなかろうか。
2015.10.14. 記
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