九月入学

 

2020年6月1日

9月入学について、もと高校教諭の立場から、問題点を私なりに整理しておきたいと思う。

まず、私の勝手な思い込みとして、4月入学と9月入学を比較した場合、多くの人は9月入学を選ぶと思います。しかし、この問題を考えるとき、「移行措置」が大きな問題となり、その困難さを考えると、「いまのままで、いいや」という結論になります。
純粋に比較検討して9月入学を選び、「政治判断」で、「決めたら、やるんだ」くらいの意気込みというか決意がないと、日本では永久に4月入学のままでしょう。それほど9月入学への移行は困難だと思います。
だからこそ、新型コロナウイルスの影響で教育が困難に直面しているとき、その解決策を兼ねて、問題提起されたのだと思います。今しかできない、千載一遇のチャンスです。この機会を逃すと、実現は難しいと思います。

9月入学のメリット

一般的な主張を、ざっと述べて、あと、私なりのコメントを述べます。
(1)海外の多くの国々の新学年の始まりに合わせる
これにより、相互の留学、教員の交流などが活性化する。
現在は、留学先の新学年に合わせて9月から留学すると。帰ってくるのは翌年の7月。したがって、1年間のブランクを覚悟して元の学年に入るか、卒業を1年遅らせて次の学年に入るか、です。現在は留学中の単位が認められるので、元の学年と一緒に卒業できますが、前後の学年を半分ずつ履修することになります。
この件に関しては、あまり述べる必要はないかと思います。しかし、今後の日本の在り方を考えると、必須でしょう。
(2)就職採用の時期が海外と同じになる一方、予算年度や異動の時期とずらすことができる。
就職にあたって、新規採用時期が一致し、海外からの採用機会が増えるとともに、海外企業への就職の道が開ける。最近は春の一括採用の見直しが進んでいて、年間随時雇用の傾向があるので、4月採用にこだわる必要はない。
(3)入学試験の時期が8月となり、卒業後ゆっくりとした受験体制が組める。
季節的にも、インフルエンザや降雪の心配がなくなる

以下、私の経験から。
(A)受験期の3学年の3学期がほとんど授業にならない。
現行のスケジュールでは、正月があけて、3学期が始まると、すぐにセンター試験。2月になると、私立大学の入学試験。その後国公立大学の二次試験で、3月中旬の卒業式を待つばかり。現実は、3学年は年末までの9か月でほぼ終わりとなる。
9月入学の場合、8月が入試期間で、7月末が卒業式となり、入試に全力を注ぐことができる。
(B)9月入学の場合、学年が、夏季休暇で中断しない。
9月・始業の場合、1学期は12月迄の4か月。2学期は1月から3月、3学期が4月から7月の3か月。実質10か月の授業時間が確保できる。運用としては、二期制で3月に春休み(試験休み・1週間)も考えられる。長期休暇がなく、授業期間が継続していて学習効果が上がる。実質的な学習期間は、現行より大幅に伸ばすことができる。現行の4月入学では、1学期3か月、2学期4か月、3学期2か月となり、年間9か月の授業時間である。
(C)文化祭・体育祭・修学旅行など
大学入試が早まる傾向にあり、現行では、入学早々のGW明けの体育祭、夏休み直後の文化祭などの不本意な日程で行っている。修学旅行も、集中する傾向があり、日程が難しい。

移行に関連して。
(ア)9月入学として、6・7・8月を有効利用
コロナの影響で児童・生徒は不安定な生活、特に精神的な不安を抱えている。この際、3か月間自由に使える時間を与えてはどうか。もちろん、学校には入学しているのであるから、基本的な面倒は学校で担当する。9月から、リスタートならば、焦る必要はない。コロナの状況に対する不安も、大幅に減ずることができる。
学校側は、時間割や授業計画・年間行事計画をじっくり練ることができる。入試は1年以上先送りになるから、進路指導の計画も十分な時間をかけて練ることができる。
オンラインでの授業が十分な学校とそうでない学校との「隔差」が話題になっているが、この問題も検討する時間が得られる。今後もコロナの影響が十分考えられるので、この間に、その隔たりを少しでも減らす準備をしておくことができる。
(イ)移行措置について
第一案の、一括移行は、1学年に17か月分の生徒が入学し、あらゆる面で、不可能。
第二案、来年2021年9月の小学校の新入生を、2015年4月2日~16年5月1日生まれとし、5年間?の移行措置を考える。13か月分の生徒を受け入れることになるが、少子化の時代で、十分可能と考えられる。(14か月では少し無理があるか?)
2022年9月入学  2016年5月2日~2017年6月1日生まれ
以下同様で
2025年9月入学  2019年8月2日~2020年9月1日生まれ
問題は、就学年齢が5か月遅れることで、諸外国との隔たりが大きくなる。

オンライン授業について

ことのついでに、オンライン授業について私見を述べておく。詳細は別稿に譲る。
(Ⅰ)いわゆる「公文式」(読み書きそろばん)が効果をあげている領域は、コンピュータの活用が有効と思う。
(Ⅱ)資格試験の教材や大学の講義などは、学生が知識を理解・習得することが目的で、その姿勢が前向きなので、有効。
(Ⅲ)問題は、中学・高校レベルの学習内容をコンピュータを通して伝える場合、生徒の学習姿勢はさておくとしても、ソフト作成に要する膨大な時間をどう保証するか。ビデオで撮って流すにしても、準備からアップするまでの時間を考えると、気が遠くなる。現在、実際にどのように行われているか、よく理解していないが、年間の単元を完備している教材はあるのだろうか。機材の予算ばかりが報道されるが、実際に、現場の教師のできる範囲を考慮すべきである。

「教育」が知識の伝達だけで良いなら、なんとかなると思うが。以下、別稿

 

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