「なので」←正しく使えていますか?
アナウンサーは誤用して強烈な後悔 「とうとう言ってしまった…」
ラジオ関西 2021/10/03 12:09
私、とうとう使ってしまいました。「なので」という言葉。初体験でした。
番組前のスタッフとの会話のなかで言ってしまったのです。その瞬間、「あー、言ってしまった……」と後悔しました。
なぜ、後悔したのか。今や老若男女が使うこの言葉、実は本来は誤った使い方です。
「なので」という言葉は、原則として単独では文頭には来ません。辞書を引いてみました。三省堂の新明解国語辞典を開きますと……、
(1)「助動詞『だ』の連体形または形容動詞の連体形 語尾『な』に、原因・理由を表す 『ので』の付いたもの」 ……だから。……であるので。
(2)(接)前に述べたことと、それを原因・理由として導かれる帰結とを結びつけることを表す。[口頭語的表現]「外で食事を済ませてきた。-今は何も欲しくない」 ……とありました。
難しい解説ですが、簡単にいえば、「○○(の理由)があるので、○○だ。」というものです。
つまり、「なので」だけなら、何が「なので」なのかの説明が必要になります。ただ、新明解には今流行りの使い方も2番目に紹介されています。
一方、岩波書店の広辞苑の付録の接続詞の説明文に、興味深い記載がありました。少し長いですが引用します。
「(前略)『なので』はもともと『断定の助動詞連体形(な)+準体助詞(の)+断定の助動詞連用形(で)』という構成で、『給料日直前なので、お金がない』のように前文末に付くのが普通であった。最近では『給料日直前だ。なので、お金がない』のように接続詞として使用されることも増えてきている。」
本来の使い方ではありませんが、こうした流れがずいぶん進んでいることが広辞苑からもわかります。
とはいえ、やはり改まった場などでの使用は、慎重であるべきだと思います。特に書き言葉(文章)では「なので」ではなく、「だから」などを使う方がいいでしょう。
そんなことをブツブツつぶやいていたら、ある番組スタッフに「もう9割くらいが 『なので』を使っているから、そっちが主流ですよ」と、言われました。
10年くらい前でしょうか。放送部の講習会で、ある高校の先生から、「(冒頭での)『なので』の使用についてどう思いますか?」と質問されました。私は「頭に独立して来るのなら、間違いです」と答えたら、先生も強く同意され、「ところが、多くの生徒が使っているんです」と困っておられました。
私たちアナウンサーも人間ですので、つい「なので」を使ってしまう人もいますが、気づいたときには指摘します。普段使っていると、放送など公の場でも出てしまうからです。少なくとも言葉を生業としている人は避けた方がいい表現です。
とはいえ、近い将来は「なので」の文頭での使用が当たり前に認められる時代が来るのかもしれませんね。
と、ここまで書いてきて、そうそう、関西にはこれに代わるちょうどよい言葉がありました。
「せやから」
これ、いかがですか?
言葉は時代とともに、その意味も使い方も変化します。「ことばコトバ」では、こうした言葉の楽しさを紹介していきます。
(「ことばコトバ」第21回 ラジオ関西アナウンサー・林 真一郎)