10.23通達

入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について(通達)

・・・前文・略・・・

1 学習指導要領に基づき、入学式、卒業式等を適正に実施すること。

2 入学式、卒業式等の実施に当たっては、別紙「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針」のとおり行うものとする。

3 国旗掲揚及び国歌斉唱の実施に当たり、教職員が本通達に基づく校長の職務命令に従わない場合は、服務上の責任を問われることを、教職員に周知すること。

別 紙

入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する指針

1 国旗の掲揚について
入学式、卒業式等における国旗の取扱いは、次の通りとする。
(1)国旗は、式典会場の舞台壇上正面に掲揚する。
(2)国旗とともに都旗を併せて掲揚する。この場合、国旗にあっては、舞台壇上正面に向かって左、都旗にあっては右に掲揚する。
(3)屋外における国旗の掲揚については、掲揚塔、校門、玄関等、国旗の掲揚状況が児童・生徒、保護者その他来校者が十分認識できる場所に掲揚する。
(4)国旗を掲揚する時間は、式典当日の児童・生徒の始業時刻から終業時刻とする。
2 国歌の斉唱について
入学式、終業式等における国歌の取扱いは、次の通りとする。
(1)式次第には、「国歌斉唱」と記載する。
(2)国歌斉唱に当たっては、式典の司会者が「国歌斉唱」と発声し、起立を促す。
(3)式典会場において、教職員は、会場の指定された席で国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する。
(4)国歌斉唱は、ピアノ伴奏等により行う。
3 会場設営等について
入学式、卒業式等における会場設営等は、次のとおりとする。
(1)卒業式を体育館で実施する場合には、舞台壇上に演台を置き、卒業証書を授与する。
(2)卒業式をその他の会場で行う場合には、会場の正面に演台を置き、卒業証書を授与する。
(3)入学式、卒業式等における式典会場は、児童・生徒が正面を向いて着席するように設営する。
(4)入学式、卒業式等における教職員の服装は、厳粛かつ清新な雰囲気の中で行われる式典にふさわしいものとする。

以上・10.23通達及び別紙(指針)から

処分に対する、被処分者の会(準備委員会)の声明2004.4.5.は こちら

職務命令書(ひな形)

ほとんどすべての学校で、同様式・同文の職務命令書が、全教員に対して、個別に、校長・副校長同席のもと、日時の記録を記録するという物々しい状況で、手渡されました。(ドラマで警察官が犯人を現行犯逮捕するときの様子が連想されます)

職務命令書

平成〇〇年〇〇月〇〇日に実施する東京都立〇〇高等学校の卒業式において、平成15年10月23日付15教指企第569号「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について(通達)」及び地方公務員法第32条(法令及び上司の職務上の命令に従う義務)に基づき、下記の通り命令します。

1 当日、教職員は全員勤務し、別紙「東京都立〇〇高等学校卒業式実施要項」による役割分担に従い、職務を適正に遂行すること。
2 式典実施に際して妨害行為・発言をしないこと。
3 式典会場において、会場に指定された席で国旗に向かって起立して国歌を斉唱すること。着席の指示があるまで起立していること。
4 式典中は、会場に留まり、生徒を指導すること。
5 服装は、厳粛かつ清新な雰囲気の中で行われる式典にふさわしいものとすること。

以上

その後、以下の項目が付け加えられた。
「学習指導要領に基づき、適正に生徒を指導すること」
また、音楽科教諭に対しては、「君が代」伴奏の命令が付け加えられている。

通達による影響

10.23通達の影響

03年10月23日、東京都教育委員会は都立学校の校長に対して、〈式場正面壇上に「日の丸」を掲げ、壇上で卒業証書授与を行うこと、教職員は指定された座席で国旗に向かって起立し、国歌を斉唱すること、音楽科教員はピアノ伴奏をすること、従わないものは処分する〉などという内容の通達(10.23通達)を出しました。これによって、生徒と話し合いながら作り上げる創意工夫にあふれた卒業式は実施できなくなり、通達通りの画一的な式しか許されなくなりました。
障がい児学校の多くは、10.23通達以前は、フロアで卒業生と在校生、保護者が向かい合った形で卒業式・入学式を行っており、それまでの教育の集大成として自分の力で卒業証書を取りに行くことが行われてきました。10.23通達によって、フロアでの対面式の卒業式・入学式は許されなくなり、生徒が自力で卒業証書を受け取りに行くことも難しくなりました。
卒業式・入学式は生徒のためのものではなく、「日の丸」を仰ぎ「君が代」を歌うための儀式になったのです。式には、通達通り実施されているかどうか監視するため、都教委から職員が派遣され、国歌斉唱時には副校長が名前入りの座席表通りの席で教職員が起立しているかどうかチェックして回ります。

東京「君が代」裁判四次原告団・パンフレットより

[補追]特別支援学校では、車椅子の生徒が壇上に登れないため、個々への卒業証書授与はできませんでした。また、家族に囲まれた「フロアー形式」の卒業式も禁止されました。
介護の必要な生徒に対しても、国歌斉唱の時間は「介護を放棄」することを求められました。

[補追]国際高校では、学校の特色から、壇上を生徒たちの滞在した国の国旗で取り囲んで祝っていましたが、このような工夫も許されなくなりました。

「服務上の責任を問う」とは

起立しなかった教員に対して、都教委は、1回目は「戒告」2回目は「減給1月」3回目は「減給6月」4回目は「停職1月」・・・などという、回数によっての累積加重という厳しい懲戒処分が行われました。最高裁は「減給1月」以上の懲戒処分は原則「裁量権の逸脱」と判示して、処分無効としましたが、都教委はその人たちに「再処分」を行っています。また、「戒告」であっても、昇給延伸が課され、その影響は定年退職まで続きます。さらに、定年退職後の65歳までの再雇用なども認めていませんでした。(解説・永原)

「不当な支配」との関係

教育委員会が、直接、現場の教員に対して、教育内容についての細部にわたる指示・命令をすることは、教育基本法の「不当な支配」に当たることから禁止されています。この通達は、校長に対する「職務命令」?の形を装い、あくまでも「校長による」(教育内容=卒入学式)の現場の教員に対する職務命令と装っています。実際には、校長に対する都教委の「指導」は「従わざるを得ない職務命令」でした。(解説・永原)

入・卒業式会場では

会場での職員の座席表は、事前に教育委員会に提出され、座席の背後には教育委員会から職員が派遣され、起立・不起立の状況を監視されました。教頭(副校長)が同席し、不起立を「現認」し、それを派遣職員が確認するという、ものものしい状況でした。
ピアノ伴奏をする芸術科の教諭に対して、起立し「君が代」斉唱をも同時に命令したという、笑い話のような職務命令もありました。(解説:永原)

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