ILO&ユネスコ勧告

2019年3月、ILO/ユネスコ教職員勧告適用合同専門家委員会は、国際機関として初めて、起立斉唱拒否は市民的不服従の権利であることを認め、「日の丸・君が代」の強制を是正することを日本政府に勧告しました。この勧告は、1966年に日本政府も賛成して採択された「教員の地位に関する勧告」《80教員は市民が一般に享受する一切の市民的権利を行使する自由をもつ》に基づいて出されました。

 

勧 告(2019)

合同委員会は、ILO 理事会とユネスコ執行委員会が日本政府に対して次のことを促すよう勧告する。

(a)  愛国的な式典に関する規則に関して教員団体と対話する機会を設ける。その目的はそのような式典に関する教員の義務について合意することであり、規則は国旗掲揚や国歌斉唱に参加したくない教員にも対応できるものとする。
(b)  消極的で混乱をもたらさない不服従の行為に対する懲罰を避ける目的で、懲戒のしくみについて教員団体と対話する機会を設ける。
(c)  懲戒審査機関に教員の立場にある者をかかわらせることを検討する。
(d)  現職教員研修は、教員の専門的発達を目的とし、懲戒や懲罰の道具として利用しないよう、方針や実践を見直し改める。
(e)  障がいを持った子どもや教員、および障がいを持った子どもと関わる者のニーズに照らし、愛国的式典に関する要件を見直す。
(f)  上記勧告に関する諸努力についてそのつど合同委員会に通知すること。

現在の国内の活動状況から

五次訴訟・弁護士陳述から

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1966  「教員の地位に関する勧告」より

身分保障

45教職における雇用の安定と身分保障は、教員の利益にとって不可欠であることはいうまでもなく、教育の利益のためにも不可欠なものであり、たとえ学校制度、または、学校内の組織に変更がある場合でも、あくまでも保護されるべきである。
46教員は、その専門職としての身分またはキャリアに影響する専断的行為から十分に保護されなければならない。

専門職としての行為の違反に関する懲戒処分

49教員団体は、懲戒問題を扱う機関の設置にあたって、協議にあずからなければならない。
50すべての教員は、一切の懲戒手続の各段階で公平な保護を受けなければならない。
とくに、
(a)懲戒の提起およびその理由を文書により通知される権利
(b)事案の根拠を十分に入手する権利
(c)教員が弁護準備に十分な時間を与えられ、自らを弁護し、または自己の選択する代理人によって弁護を受ける権利(d)決定およびその理由を書面により通知される権利
(e)明確に指定された権限ある当局または機関に不服を申し立てる権利
51懲戒からの保護、ならびに懲戒それ自体の効果は、その教員が、同僚の参加のもとで判定を受ける場合、非常に高まる、ということを当局は認識しなければならない。

職業上の自由

61教育職は専門職としての職務の遂行にあたって学問上の自由を享受すべきである。教員は生徒に最も適した教材および方法を判断するための格別の資格を認められたものであるから、承認された計画の枠内で、教育当局の援助を受けて教材の選択と採用、教科書の選択、教育方法の採用などについて不可欠な役割を与えられるべきである。
62教員と教員団体は、新しい課程、新しい教科書、新しい教具の開発に参加しなければならない。
63 一切の視学、あるいは監督制度は、教員がその専門職としての任務を果たすのを励まし、援助するように計画されるものでなければならず、教員の自由、創造性、責任感をそこなうようなものであってはならない。

教員の権利

79教員の社会的および公的生活への参加は、教員の個人的発達、教育事業および社会全体の利益のために奨励されなければならない。
80教員は市民が一般に享受する一切の市民的権利を行使する自由をもち、かつ、公職につく権利をもたなければならない。

「教育条約集」(永井憲一監修・国際教育法研究会編)

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