声明・2012.1.16.

 

声   明

 

1 本日,最高裁判所第一小法廷(金築誠志裁判長)は,都立学校の教職員167名(以下,「原告ら教職員」という)が「日の丸・君が代」強制にかかわる懲戒処分(戒告処分,減給処分)の取消しを求めていた事件につき,減給処分については東京都教育委員会(以下,「都教委」という)に裁量権逸脱・濫用があり違法であるとして,これを取消す原告ら教職員一部勝訴の判決を言い渡した。

原告ら教職員は,各校長による卒業式等の国歌斉唱時に起立斉唱あるいはピアノ伴奏を命じる職務命令に従わなかったとして懲戒処分(1名が減給,166名が戒告)を受けたものであるところ,原審の東京高裁第2民事部2011年3月10日判決は,戒告処分,減給処分のいずれも都教委の裁量権逸脱・濫用に当たり違法であるとして,その取消しを命じた。本日,最高裁判決は,これを一部変更し,減給処分については裁量権逸脱・濫用により違法としたものの,戒告処分については裁量権の逸脱濫用はないとした。

また本日,同最高裁第一小法廷は,同様の事案において,特別支援学校の教員が停職処分(1ヶ月)を受けた事件について,停職処分の取消しを命じる判決を言い渡している。

戒告処分を適法としたとはいえ,最高裁が本日の判決によって東京都の教育行政の暴走に歯止めをかけたことにほかならず,わたしたちは,本日の最高裁判決を評価するものである。

2 都教委は,2003年10月23日通達(以下,「10・23通達」という)及びこれに基づく職務命令により卒業式等における国旗掲揚・国歌起立斉唱を教職員に義務付け,命令に従えない教職員に対し,1回目は戒告,2,3回目は減給(1~6ヶ月),4回目以降は停職(1~6ヶ月)と,回を重ねるごとに累積加重する懲戒処分を繰り返す,いわば「国旗・国歌強制システム」を作りあげ,これを実施してきた。

最高裁は,「不起立行為等に対する懲戒において戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択することについては,本件事案の性質等を踏まえた慎重な考慮が必要となる」とした上で,「過去に,入学式の際の服装等に係る職務命令違反による戒告1回の処分歴があることのみを理由に減給処分を選択した都教委の判断は,重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠」くとして,減給処分の取消しを命じた。

最高裁が原審判決を変更し,原告ら教職員の受けた処分の大部分を占める「戒告」が懲戒権の逸脱・濫用にならないとしたことは遺憾であり,わたしたちは承服できない。

しかし,「毎年度2回以上の式典の度に懲戒処分が累積して加重されるという短期間で反復継続的に不利益が拡大していくこと等を勘案」し,減給以上の懲戒処分を違法としたことは,きわめて重要な意義を有するものであり,最高裁が東京都が実施してきた「国旗・国歌強制システム」を断罪したものというべきである。

また,最高裁は,職務命令は原告ら教職員の思想・良心を間接的に制約するものであると認め,かかる思想・良心に関わる事項を懲戒処分によって強制することは許されない場合があることを判断したものであり,地方公務員に対する懲戒権行使の限界を示す判決として注目すべきである。

なお,宮川光治裁判官は反対意見において,「たとえ戒告処分であっても懲戒処分を科すことは,重きに過ぎ,社会通念上著しく妥当性を欠き,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するもの」であって違法となるとの判断を示しており,われわれの主張を容れたものであり高く評価する。また,多数意見においては,戒告処分について「これを当不当の問題として論ずる余地はあり得る」とされており,無条件に戒告処分を容認したものではないというべきである。

3 もっとも,最高裁は,10・23通達,職務命令,懲戒処分が,憲法19条,20条,23条,26条違反及び改定前教育基本法10条(不当な支配の禁止)に該当し違憲違法であるという原告ら教職員の主張については,従前の判決を維持し,これを容れずに原告らの上告を棄却した。この点は事案の本質を見誤るものであり,遺憾というほかはない。

4 都教委は,最高裁の司法判断を踏まえて「国旗・国歌強制システム」を見直し,教職員に下した全ての懲戒処分を撤回しなければならない。

また,直ちに10・23通達を撤回して職務命令の発出をやめ,教育現場での「国旗・国歌」の強制と,「国旗・国歌」強制に象徴される教職員に対する管理統制をあらためるべきである。

わたしたちは,この最高裁判決を機として,今後も「国旗・国歌」の強制を許さず,学校現場での思想統制や教育支配を撤廃させて,児童・生徒のために真に自由闊達で自主的な教育を取り戻すための取り組みを続ける決意であることをあらためてここに宣言する。

 

 2012年1月16日

東京「日の丸・君が代」処分取消訴訟(一次訴訟)原告団・弁護団

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