一次訴訟

一次訴訟の経過と最高裁判決の内容

[訴訟の経過]
2007年2月7日に172名が提訴した一次訴訟は、計10回の口頭弁論を経て、2009年3月26日に「全面棄却」判決(中西判決)が言い渡され、控訴審に移行、その後6回の口頭弁論を経て、2010年3月10日に逆転勝利判決(大橋判決)が出されました。ここでは違憲判断こそなかったものの、裁量権逸脱濫用による違法が認定され、全員の処分取消を命じる内容でした。
そして3月23日には双方が上告。最高裁は10月6日付で都側の上告棄却と、当方の上告受理申立への不受理決定をしたうえで12月12日に弁論が開かれ、2012年1月16日に判決が言い渡されました。

東京「君が代」裁判 第一次訴訟 提訴にあたっての声明文(2007.2.9.)はこちら

[最高裁判決の内容]
最高裁は、減給処分1名のみを裁量権逸脱濫用による違法として高裁判決を維持し、残りの166名分の戒告処分は違法にあたらないとして高裁判決を破棄(無効とすること)しました。この判決の判断の要点は以下の3点です。

①教職員に対する国歌起立斉唱の職務命令は憲法19条違反ではない。
②職務命令に違反して不起立等の行為をした者に対する戒告処分は、「裁量権の範囲内における当不当の問題として論じる余地はあり得る」が違法とは言い難い。
③職務命令違反による戒告一回の処分歴があることのみを理由に減給処分を選択した都教委の判断は、「懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるものとして違法の評価を免れない」※この判断を「裁量権逸脱濫用による違法」といいます。

なおこの判決は、全員一致ではなく4対1の多数意見によるものでした。よって多数意見への反対意見が1つ、また判決に関する補足意見が2つついています。(注)

(多数意見による判決理由)
憲法19条違反に関しては、2011年6~7月に出された一連の関連訴訟判決と同じ理由によるとしています。ただ大橋判決における「(教職員以外の)卒業式等の参列者に対し、国歌斉唱に際して国旗に向かって起立することを促すのはよいとして、これを強制することについては、憲法19条の思想及び良心の自由の保障との関係において、問題があるといわざるを得ない。」という部分は維持されています。また減給以上の加重処分については、「不利益の内容との権衡を勘案してもなお規律や秩序の保持等の必要性の高さを十分に基礎づけるものであることを要する」として、単なる不起立の繰り返しを理由に処分を加重するのは違法であるとしました。

(宮川反対意見は「戒告も違法」)
宮川光治裁判官は、まず本件職務命令が憲法19条違反である可能性があるということを述べ、裁量権逸脱濫用についての審査においても戒告処分は違法で取り消されるべきであるという意見でした。

(補足意見では都教委の姿勢に再考を求める)
櫻井龍子裁判官は、一律の累積加重処分は「法が予定している懲戒制度の運用の範囲とは到底考えられない」とし、付言で「不起立と懲戒処分の繰り返しが行われていく事態が教育現場の在り方として容認されるものではないことを強調しておかなければならない」「これまでにも増して自由で闊達な教育が実施されていくことが切に望まれる」などと述べています。

以上 東京「君が代」裁判 傍聴ハンドブック(2017.9.15)より抜粋

第一次訴訟 最高裁判決にあたっての声明文は こちら

最高裁判決に対する反対意見や補足意見について(注:永原)

最高裁には15人の裁判官がいて、5人ずつの裁判官による三つの小法廷が構成されます。重大な案件は15人からなる大法廷が開かれます。最高裁での判決はこの5人または15人の裁判官による多数決で決定されます。この時、判決に反対であった裁判官は、反対意見や補足意見を述べることができます。これらの意見は判決文の一部として記載されます。
判決とは全く逆の意見が述べられることもあり、検討すべき意見として尊重されます。

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