最高裁・補足意見

最高裁の判決は裁判官の多数決で行われます。小法廷では 5 人、大法廷では 15 人の裁判官による多数決ですが、判決の内容について意見や疑問を持つ裁判官は、補足意見や反対意見を述べることができます。これらの意見は判決の一部として取り扱われます。
東京「君が代」訴訟では、第一次訴訟(2012年1月16日判決)、第二次訴訟、第三次訴訟の三つの小法廷で15人の裁判官により判決が決定されましたが、2名の裁判官が反対意見を、9名の裁判官が補足意見を述べました。これは、あまり例のないことです。

宮川光治裁判官(一次)反対意見全文    (予防訴訟)反対意見全文  (嘱託採用拒否)反対意見全文
「本件は少数者の思想及び良心の自由に深く関わる問題であると思われる。憲法は個人の多様な思想及び生き方を尊重し、我が国社会が寛容な開かれた社会であることをその理念としている。そして、憲法は少数者の思想及び良心を多数者のそれと等しく尊重し、その思想及び良心の核心に反する行為を行うことを強制することは許容していないと考えられる。このような視点で本件を検討すると、私は多数意見に同意することはできない」

櫻井龍子裁判官(一次)補足意見全文   (予防訴訟)補足意見全文
「式典のたびに不起立を繰り返すということは、その都度、葛藤を経て、自らの信条と尊厳を守るためにやむをえず不起立を繰り返すことを選択したもの」というべきであって
「これらの職員の中には、自らの信条に忠実であればあるほど心理的に追い込まれ、上記の不利益の増大を受忍するか、自らの信条を捨てるかの選択を迫られる状態に置かれる者がいる」
「今後いたずらに不起立と懲戒処分の繰り返しが行われていく事態が教育の現場の在り方として容認されるものではないことを強調しておかねばならない。教育の現場においてこのような紛争が繰り返される状態を一日も早く解消し、これまでにも増して自由で闊達な教育が実践されていくことが切に望まれることであり、全ての関係者によってそのための具体的な方策と努力が真摯かつ速やかに尽くされていく必要があるべきというべきである」

鬼丸かおる裁判官   (二次)補足意見全文
「個人の思想及び良心の自由は憲法19条の保障するところであるから、その命令の不服従が国旗国歌に関する個人の歴史観や世界観に基づき真摯になされている場合には、命令不服従に対する不利益処分は、慎重な衡量的配慮が求められるというべきである」「謙抑的な対応が教育現場における状況の改善に資するものというべき」

大谷剛彦裁判官
「過度の不利益処分をもってする強制や、他方で殊更に示威的な拒否行動があって教育関係者間に対立が深まれば、教育現場は混乱し、生徒への悪影響もまた懸念されよう。全体で行う学校行事における国歌斉唱の在るべき姿への理解も要するであろうし、また一方で個人の内心の思想信条に関りを持つ事柄として慎重な配慮も要するであろう。教育関係者の相互の理解と慎重な対応が期待されるところである」

須藤正彦裁判官
「教育は強制ではなく自由闊達に行われることが望ましいのであって、上記の契機を与えるための教育を行う場合においてもそのことは変わらないであろう。その意味で、強制や不利益処分も可能な限り謙抑的であるべきのみならず、卒業式などの儀式的行事において、「日の丸」、「君が代」の起立斉唱の一律強制がなされた場合に、思想及び良心の自由についての間接的制約が生ずることが予見されることからすると、たとえ、裁量の範囲内で違法にまでは至らないとしても、思想及び良心の自由の重みに照らし、また、あるべき教育現場が損なわれることがないようにするためにも、それに踏み切る前に、教育行政担当者において、寛容の精神の下に可能な限りの工夫と慎重な配慮をすることが望まれるところである」

竹内行夫裁判官
「外部的行動に対する制限を介しての間接的な制約となる面があると認められる場合においては、そのような外部的行動に対する制限について、個人の内心に関りを持つものとして、思想及び良心の自由についての事実上の影響を最小限にとどめるように慎重な配慮がなされるべきは当然のことであろう」

千葉勝美裁判官
「国旗及び国歌に対する姿勢は、個々人の思想信条に関連する微妙な領域の問題であって、国民が心から敬愛するものであってこそ、国旗及び国歌がその本来の意義に沿うものとなるのである。そうすると、この問題についての最終解決としては、国旗及び国歌が、強制的にではなく、自発的な敬愛の対象になるような環境を整えることが何よりも重要である」

岡部喜代子裁判官
「多数意見の述べるとおり、起立斉唱行為を命ずる旨の職務命令が個人の思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があることは否定し難いものであり、思想及び良心の自由が憲法上の保障であることからすると、その命令が憲法に憲法に違反するとまではいえないとしても、その命令の不履行に対して不利益処分を課すに当たっては慎重な衡量が求められるというべきである」

横田尤孝裁判官  (予防訴訟)補足意見全文
「国旗及び国歌をめぐる職務命令違反行為とそれに対する懲戒処分の応酬という虚しい現実は,本来教育の場にふさわしくない状況であるといわなければならない。関係者は,ともども,こうした現実が多感な生徒に及ぼす影響とこの問題に関する社会通念の在り所について真摯に考究し,適切妥当な解決のための具体的な方策を見いだすよう最大限の努力をすることが望まれる。この稔りなき応酬を終息させることは,関係者全ての責務というべきである。」

金築誠志裁判官(一次)   (予防訴訟) (嘱託採用拒否)補足意見全文 
「教職員に対する職務命令に起因する対立であっても、これが教育環境の悪化を招くなどした場合には、児童・生徒も影響を受けざるをえないであろう。そうした観点からも、全ての教育関係者の慎重かつ賢明な配慮が必要とされることはいうまでもない」

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